奇跡のりんご

3/27 2011年 福岡サンパレス

9時半開場にもかかわらず、9時過ぎには既にサンパレスの前のスロープが
人であふれかえっていた。

多くの人が前売り券を買って見に来ている、年配の方から子供まで。

奇跡のりんごはNHK プロフェッショナル 仕事の流儀でも紹介されたので
ご存知の方が多いのだろう、笑うと前歯がない優しそうなおじいさんである。

だが、本当は自分と同年代。木村さんの苦悩と苦労が親の世代と見間違うほどに
姿を変えていたのだ。

若く見える事なんて全然誇れることじゃないとつくづく思う。





木村さんが話し始める、朴訥とした穏やかな話し方故に言葉一つ一つが心に届く。

奇跡のリンゴが実って、今は年間200日以上こうやって各地を回っています
それまで私は家族を犠牲にして来ました。

鉛筆一本、服一枚買ってやることができませんでした、家族への思いがこみ上げたのか
声が喉の奥でくぐもった。

少しの間があったそして続けた言葉は

でも、こうやって皆様に認められるようになった時家族は本当に喜んでくれました。

その言葉を聞いただけで思わず涙があふれてきた、木村さんの笑顔の向こうに
苦労をしたであろう家族の姿が見えたような気がした。

男だからきっと言葉は少なかったであろう、見守る家族は背中をみて言葉を飲み込んで
来たのだろうと想像がつく。


完全無農薬でりんごは作れないと世界の常識であったことなど、一消費者として知ることもなく
ただ皮はむいて食べないとよくないという断片的な情報だけは得ていた。

農家でもないし、家庭菜園といえるほどに物づくりをしているわけでもないが木村さんの
言葉を思わず書き留め始めていた。

スクリーンに大きく映し出される木村さんの顔とスライド、遠景の木々が茶色く色づいている
畑のりんごは青々とした葉っぱをつけて赤い実を揺らしている。

何かおかしくありませんか?と問われても、木村さんが答えを話し始めるまでよくわからなかった。

そうだよね、一年中りんごだってきゅうりだってスーパーに行けば買える都会の生活で
季節がないことが普通になってしまったんだ。

季節を忘れたりんごの葉。
木も季節を知ってこそ生きている証ではないですかと木村さんが会場に問うた。

自分たちが子供のころには一年中食べられる野菜や果物はあっただろうか?

農薬や肥料や除草剤をたくさん使って作られた作物たちは、
私達の欲求を満たしてくれた、その代償は?

アレルギー疾患の患者数は年々増え続け、糖尿病やガンといった疾病が私達をむしばんでいる。

日本の科学薬品を使った農業は世界でも飛びぬけていると、それ故に
世界で一番怖い野菜の国・農薬になれた国民と称されているという。

お隣で日本では既に使用禁止になった除草剤を使っていると盛んにTVが報道していた
本当はわが国も同じなのかもしれない。

有機肥料と名付けられた化学薬品、およそ10%しか肥料として活用されていない

残りの半量が土壌から蒸発して拡散し窒素ガスとなって
地球温暖化の一翼を担っていることを世界中は知っていることだとも。


自然農法で作られた野菜やコメが腐らない、スライドの中の写真が訴える。

冷蔵庫に入れたきゅうりの下半分が溶けてドロドロになっていたことがあった
子供の頃のきゅうりって溶けたっけと首を傾げた事が思い出される。

化学薬品を使っているから腐らないと勘違いしていた部分がある。

本来は自然農薬で作ったものは腐るのではなく枯れていくのだと木村さんは言う。

動物性の肥料や化学肥料を使って作られた作物は、腐るより溶けるといったイメージで
ベチャベチャになって無くなっていく。

命を育み次の世代を盛りたてようと頑張っている、もっと謙虚に自然に寄り添いながら
生きていかなくてはいけないのだろう。

木村さんが話す言葉はりんごや作物だけの理ではない。

人間も同じように、育ててやっているのではなく、手助けするだけでいいのかもしれない。


そして声をかける、ありがとう、よく頑張ったね。


人にも物にも謙虚に生きていかなければ。

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